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なぜAI時代にアナログツールが残るのか——Rolodex・レコード・フィルムが教える「手触りの経済学」

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Curated by Ryo

なぜこの記事を選んだか

この前海外旅行でRolodex(連絡先カードホルダー?)を買ったんです。多分つかわないけど、あのアナログ感と時代感(海外ドラマのThe officeとかに出てきそうな感じ)が好きで…!

AI構成島田の発想・思考をもとに AI が構成しています。/ 選定・確認: 島田龍

きっかけは、Rolodex でした。

連絡先を回転式のカードで管理する、あの古い卓上文具です。スマートフォンの連絡先アプリがあれば一秒で検索できる時代に、なぜわざわざ回すカードなのか。普通に考えれば非合理です。ただ、その非合理さに惹かれてしまう感覚が、たしかに自分の中にありました。

そして、これは自分だけの偏屈な趣味ではないようです。デジタルが全部を飲み込むと思われていた領域で、アナログの道具が消えるどころか売上を伸ばし、生産を再開し、若い世代に再発見されている——そういう事例が、音楽にも、写真にも、文房具にも、映画の現場にも散らばっています。

この記事では、領域をまたいでその実例を並べてみます。なぜ手触りのある道具は、AI時代になっても残るのか。点を繋いでいくと、案外ひとつの線が見えてくる気がします。

1. Rolodex——「人脈」という言葉になった文具

まず、きっかけになった Rolodex から。

Rolodex は1956年、Arnold Neustadter の会社 Zephyr American のチーフエンジニアだった Danish engineer の Hildaur Neilsen によって発明されました(Wikipedia: Rolodex、原文 "The Rolodex was invented in 1956 by Danish engineer Hildaur Neilsen, the chief engineer of Arnold Neustadter's company Zephyr American")。市場に出たのは1958年とのこと(同ページ "First marketed in 1958")。

面白いのは、この道具が単なる文具を超えて、言葉そのものになってしまったことです。Neustadter は「ネットワーキングという技芸の、永続的なシンボル(a lasting symbol of the art of networking)」を作った人物として記録されています(Wikipedia: Arnold Neustadter)。そして「Rolodex」は今や比喩としても使われていて、ある人物が持つ人脈そのものを指す言葉になっています。Wikipedia はこの用法を、"the value of a CEO's contacts"(CEO の持つコネクションの価値)を表す表現として説明しています(Wikipedia: Rolodex)。

物理的なカードの束が、いつのまにか「あの人の人脈」という抽象概念のメタファーになった。道具が文化のアイコンになる、というのはこういうことですね。デジタルの連絡先リストが「あの人の iPhone の連絡先」と呼ばれることは、たぶんありません。

2. レコード——18年連続で伸び続けるという異常事態

次は音楽です。ここが一番、数字がはっきりしています。

ストリーミングが音楽の聴き方を完全に塗り替えたあとも、アナログのレコード(vinyl)は売上を伸ばし続けています。それも一年や二年ではありません。RIAA(全米レコード協会)の2024年の年末レポートによれば、vinyl の売上は 18年連続 で成長し、2024年には 7%増の14億ドル($1.4 billion) に達しました(Billboard(RIAA を引用)、原文 "Vinyl was the standout performer yet again, growing by 7% to $1.4 billion, marking its 18th consecutive year of growth.")。RIAA 自身も、これを1984年以来の最高水準だとしています(RIAA 2024 year-end report、原文 "Vinyl's eighteenth straight ascent scored nearly three-quarters of physical format revenue at $1.4B – the highest since 1984")。

そして象徴的なのが、CD との逆転です。2022年、アメリカで vinyl が CD よりも多く売れました。1987年以来、初めてのことです。具体的には、2022年に vinyl が 4100万枚(41 million units)、CD が 3300万枚(33 million) という数字でした(Rolling Stone(RIAA を引用)、原文 "Consumers purchased 41 million vinyl units compared to 33 million CDs in 2022, according to the Recording Industry Association of America's year-end report.")。この逆転は一過性ではなく、その後も続いています。2024年には vinyl が 4400万枚(44M) 出荷され、3年連続で CD(3300万枚)を上回りました(RIAA 2024 year-end report、原文 "For a third consecutive year, vinyl also outperformed with 44M records shipped compared to 33M CDs")。

便利さで言えば、ストリーミングに敵うものはありません。それでも人は、針を落とすあの儀式と、ジャケットの大きさと、所有している実感のために、レコードを買い続けている。便利さとは別の軸で、人は道具を選ぶことがあるんですね。

3. フィルム写真——Kodak が工場を「24時間365日」に戻した

写真の世界でも、同じことが起きています。

デジタルカメラとスマートフォンがフィルムを駆逐したと、誰もが思っていました。実際、Kodak は一度は経営破綻まで経験しています。ところが近年、フィルムの需要が想定外に伸びて、Kodak は生産を拡大せざるを得なくなりました。Kodak の Film Manufacturing 担当 VP、Nagraj Bokinkere は2022年にこう語っています。フィルムの仕上げ工程は「数年前は週5日・1シフトだったのが、去年は週5日・3シフト、そして今は24時間365日(24/7)操業になった」(PetaPixel、原文 "we have grown from a five days a week, single shift operation a few years back. To last year, we were three shifts, five days a week and now we are a 24/7 operation.")。

同じ人物が、需要に追いつけない状況をこうも言っています。「過去18ヶ月で、フィルムと薬品の現場に300人以上を雇った。それでもまだ足りない。文字どおり需要に追いつけず、もっと人手が必要だ」(PetaPixel、原文 "In the last 18 months, we've hired over 300 people across the film and chemicals floor... We literally cannot keep up with demand, we need more employees.")。Kodak の CEO、Jim Continenza も2023年に、「フィルムメーカーや写真家からの需要がある限り、我々はフィルムを作り続ける」と明言しました(PetaPixel、原文 "We are committed to manufacturing film as long as there is demand from the filmmakers and photographers worldwide.")。

そしてこの復権を牽引しているのが、若い世代だという点が興味深いです。The Conversation の記事によれば、世界で4200万人いるとされるアクティブなフィルムカメラ利用者のうち、35%が18歳から30歳だと報告されています(The Conversation、原文 "35% of the 42 million active film camera users worldwide were reported to be between the ages of 18 and 30.")。デジタルネイティブな世代が、わざわざ現像を待つフィルムを選んでいる。ここには何か、効率では説明しきれない理由がありそうです。

ちなみに、インスタント写真も好調です。Fujifilm の instax シリーズ(インスタントカメラとスマホプリンター)は、累計の世界販売台数が 1億台(100 million units) を突破したと、2025年4月に Fujifilm 自身が発表しています(Fujifilm 公式、原文 "cumulative global sales of its instax™ line... have exceeded 100 million units.")。スマホで何枚でも撮れる時代に、その場で一枚プリントが出てくる体験に、これだけの人がお金を払っている、ということです。

4. 映画の現場——スコセッシやノーランがフィルムを守った話

ここで、自分の本業に近い領域の話を入れさせてください。映画の撮影現場です。

デジタルシネマカメラが標準になった今でも、フィルム(celluloid)で撮ることを選ぶ作家は残っています。それも、業界を代表する人たちです。

2015年、Kodak のモーションピクチャー用フィルム事業は存続の危機にありました。これを救ったのが、ハリウッドの主要スタジオと監督たちの連合でした。Warner Brothers、Disney、Universal、Paramount、Fox、Columbia の6大スタジオが、Kodak のフィルムを買い続ける契約に署名し、Martin Scorsese、Quentin Tarantino、Christopher Nolan といった監督がそれを後押ししました(No Film School)。

なぜそこまでしてフィルムを守るのか。Scorsese はこう語っています。「我々の業界、我々の映画作家たちが Kodak の後ろに結集したのは、彼らを失うわけにはいかないと分かっていたからだ。これまでに失ってきた、ほかの数多くのフィルムストックのようには」(Variety、原文 "Our industry – our filmmakers – rallied behind Kodak because we knew that we couldn't afford to lose them, the way we've lost so many other film stocks.")。さらに保存性についても、「フィルムは、いまだに映画を保存する最良かつ唯一の、時間によって証明された方法だ。デジタル情報が残る保証はないが、適切に保管・管理すればフィルムは残ると分かっている」と述べています(Variety、原文 "We have no assurance that digital information will last, but we know that film will, if properly stored and cared for.")。

Christopher Nolan の理由は、もっと実利的でもあります。「フィルムで作業するほうが安いし、見た目もはるかに良い。100年にわたって知られ理解されてきた技術で、極めて信頼性が高い」(/Film、原文 "It's cheaper to work on film, it's far better looking, it's the technology that's been known and understood for a hundred years, and it's extremely reliable.")。そして「(デジタルに)変える良い理由が出てくるまで待っている。ただ、まだその理由を見ていない」とも(同記事、原文 "waiting until there's a good reason to change. But I haven't seen that reason yet.")。

Kodak の当時の CEO、Jeff Clarke がフィルムを表現したこの一言が、たぶん核心に近いです。フィルムには「比類のない豊かさと独特の質感(unparalleled richness and unique textures)」がある、と(Variety、原文 "we will continue to provide motion picture film, with its unparalleled richness and unique textures, to enable filmmakers to tell their stories and demonstrate their art.")。豊かさ、質感、信頼性、保存性。どれもスペック表の数字には出にくい価値ですね。

5. 紙とペン——手で書くことには理由があった

最後は、もっと身近な道具です。紙のノートとペン。

スマートフォンとクラウドメモがあれば、紙のノートはいらないはず。なのに、紙の文房具は静かに伸びています。Moleskine を例にとると、ある報道では、世界の文房具市場が年3〜4%で成長するなか、Moleskine は 年20% で売上を伸ばしていると紹介されています(The Local Italy、原文 "Moleskine growing sales at 20 percent a year in a global stationery market expanding at 3-4 percent?")。同社の売上は7年で3倍以上になったとも報じられています(同記事 "The Italian group's sales have more than tripled in the last seven years.")。

そして興味深いのが、デザイナーへのアンケートです。同記事は、4000人のデザイナーを対象にした調査で、65%がアイデアを記録するのにペンとノートの組み合わせを好む、という結果を紹介しています(The Local Italy、原文 "65 percent of them prefer a pen/notebook combination for recording ideas.")。デジタルツールの最前線にいる人たちが、最初のアイデアは紙に書く、と。

この「手で書く」ことには、実は学術的な裏付けもあります。Mueller と Oppenheimer による有名な研究(Psychological Science 誌、2014年)は、講義のノートをラップトップで取った学生より、手書きで取った学生のほうが、概念的な問いに対して良い成績を出したと報告しています。原文を引くと、「ラップトップでノートを取る人は、講義を一字一句書き写してしまう傾向があり、情報を処理して自分の言葉に置き換えることをしない。それが学習にとって有害だ」(Psychological Science(journal abstract)、原文 "laptop note takers' tendency to transcribe lectures verbatim rather than processing information and reframing it in their own words is detrimental to learning.")。

手の遅さが、思考を強制する。書き写せないからこそ、要約し、選び、自分の言葉にする。これは推測ですが、アナログの「制約」は欠点ではなく、機能なのかもしれません。

点を繋ぐ——なぜ手触りは残るのか

ここまで、Rolodex、レコード、フィルム写真、映画のフィルム、紙のノートと、別々の領域を見てきました。並べてみると、いくつか共通する線が浮かんできます。あくまで自分なりの解釈なので、ここからは「〜かもしれません」という話として読んでください。

ひとつめは、制約が機能になる こと。レコードは曲を飛ばしにくいから一枚を通して聴く。フィルムは枚数が限られるから一枚を丁寧に撮る。手書きは速く書けないから要約する。デジタルが取り払った「不便さ」が、実は集中や所有や思考を支えていた、という逆説です。Nolan がフィルムの信頼性を、Mueller らが手書きの遅さの効用を語るのは、たぶん同じことの別の面ですね。

ふたつめは、所有と手触り です。ストリーミングは便利ですが、棚に並ぶ実感はありません。instax が1億台売れたのも、レコードが18年伸び続けるのも、「自分のものとして手元にある」感覚への対価だと考えると腑に落ちます。

みっつめは、経年で育つ こと。デジタルデータは劣化しない代わりに、味も出ません。Scorsese が「フィルムは時間によって証明された保存方法だ」と言うように、物理的なものは時間を引き受けます。

実はこの三つは、自分が普段モノを選ぶときの基準とも重なっている気がします。量産より老舗、軽さより素材の重み、新品の輝きより経年で育つもの——そういう軸でモノを選んでいると、便利さの先にある価値が、なんとなく信じられるようになります(このあたりの自分のモノ選びの話は、別の記事で書くかもしれません)。

そして最後に、AI時代という補助線を引くと、もうひとつ見えてきます。AI が文章も画像も音楽も無限に、ゼロコストで生成できるようになるほど、「無限に複製できないもの」の価値が相対的に上がる、という構図です。これは推測ですが、デジタルとAIが効率の極限まで行けば行くほど、その対極にある「一回性」「手触り」「所有」「時間」を持つアナログが、むしろ際立っていくのかもしれません。

アナログツールは、ノスタルジーで生き残っているわけではなさそうです。便利さとは別の軸で、人間がずっと求めてきた何か——それを、ちゃんと供給し続けている。Rolodex を回しながら、そんなことを考えていました。

Curated by Ryo

島田のコメント

Rolodexを買った日記から広げてClaudeが書いた記事ですが、まあその通り。私がそういうの好きなのをちゃんと理解してますね。 ただ紙とペンだけはずっと馴染まなかった… 字が下手なのもあってか、スマホやパソコンでデータで残さないと気が済まない人間です。 そのおかげでAIに読み込ませるデータ/コンテクストがたくさんあるのは助かってますけどね。