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私が学び続けている3人のDP——フレイザー・ホイテマ・ディーキンスの何が違うのか

DPシネマトグラフィーGreig FraserHoyte van HoytemaRoger Deakins映像技法
AI構成島田の発想・思考をもとに AI が構成しています。/ 選定・確認: 島田龍

映像を学ぶ人間として、「誰の仕事から盗むか」は最初に決める問いだと思っている。今回はシネマトグラフィーにこだわった大作映画をほとんど独占していると言えるGreig Fraser、Hoyte van Hoytema、Roger Deakinsの3人を見てみる。それぞれの仕事が、まったく異なる方向で自分の「こう撮りたい」という感覚を刺激する。

Greig Fraser——機材の限界を哲学に変える人

グレイグ・フレイザーを知ったのは『ザ・クリエイター 創造者』だった。120億円規模の映画をSONY FX3で撮り切ったという事実が衝撃で、「これを理由に観に行ったことを謝りたい最高傑作」という矛盾した感情を持って劇場を出た。

DUNEとDUNE PART 2での広大なIMAX映像とは真逆のアプローチが、同一人物によるものだという事実。フレイザーの仕事から学べるのは、機材や予算が哲学を決めるのではなく、哲学が機材を選ぶ、という逆順の思考だ。

『プロジェクト・ヘイル・メアリー』は「人生5本指」に入る体験だった。グレイグのシネマトグラフィーへの期待を持って観に行き、それが期待を超えてきた。宇宙空間の孤独感と光の扱い方が、どこか彼の軽量機材哲学と地続きに見える——そういう鑑賞体験は、自分が DP を目指しているからこそ持てる視点だと思う。

Hoyte van Hoytema——「いつものホイテマ」という安心感と信頼

ノーラン作品のDP、というのが最初の認識だったが、Jordan Peeleと組んだ『NOPE』が印象的だった。IMAXレーザーGTで観た映像の密度は、「ホイテマだ」となんとなく分かった。(IMAXフィルム作品はほぼ彼のばかり観ているからかもだが…)

『テネット』は3回観ても語り尽くせないクオリティで、「いつものホイテマって感じ」という感想が出てくる時点で、それはブランドとして確立している。映像作家として一貫した「顔」を持つことの強さを、彼の仕事から考える。

インターステラーをIMAX GT(グランドシネマサンシャイン)で観た時の感動は、映像体験として最上位に置いている。あの体験が「映像の力を信じる」という自分の基盤を作った部分がある。

ちなみに、あまり語られないがホイテマのすごいところは「論理的で自然な照明」だと勝手に思ってます。

単に「自然光っぽい」ではなく、“光源の論理”を現実に置き、必要なら巨大な外部リグや独自カメラ技術まで作るタイプです。画面上はかなりシンプルに見える一方、作品によって現場インフラの規模は極端に変わります。

作品 照明の哲学・狙い 実際の入れ方/規模感 出典
Her / 世界でひとつの彼女 小さく、親密で、作為を消す。Alexaの感度を使って「足す」より「消す」方向。 アパート場面は小クルー・ワンカメラ・ビデオ村なし。照明を全部消して、窓から入る都市の環境光だけで撮ることもあった。かなりミニマル。 https://www.icgmagazine.com/web/exposure-spike-jonze/
Spectre / 007 スペクター セット内に灯体を見せず、現実の光源方向を保つ。Bond規模でも、画面上は“光がそこにある理由”を重視。 ローマの会議場はテーブル上に巨大ソフトボックス、50基のスペースライト、T12バックライトなど。ブレナム宮殿の夜外観は40×40フィートのソフトボックス。Ice Qはトランスライト+大量の蛍光灯・LED・18K HMIバウンス。テムズ川夜景は8台の建設クレーン、28台の発電機、Full Wendy、20K多数など、本人曰く最大級の照明。大規模作品としてもかなり巨大。 https://theasc.com/post/the-film-book/lighting-spectre/
Dunkirk / ダンケルク 戦場に“いる”感覚を優先。自然環境をコントロールしすぎず、現実の天候と光を受け入れる。 多くは自然光。浜辺の昼外では光に介入しない方針。沈没船などのステージ場面でも実用光源寄り。IMAXカメラやリグの運用は大規模だが、照明そのものは大作の割にかなりシンプル。 https://www.latimes.com/entertainment/envelope/la-en-mn-crafts-dunkirk-20180109-story.html https://theasc.com/article/2018-oscar-nominations-for-best-cinematography-recognize-exceptional-work/
Ad Astra / アド・アストラ 太陽を「遠くにある単一の強い光源」として扱う。宇宙の距離感に応じて光の色・強度を変える。 太陽光は18K Arrimax、Jo-Leko HMI、Dedolightの平行光などで硬い影を作る。月面は広範囲を人工灯でやると影が不自然になるため実際の太陽光を使用。宇宙船内は約90%がカスタムLEDチューブ、SkyPanel、ワイヤレスDMX、バッテリー駆動。火星はナトリウム灯的なオレンジ。見た目は単純光源、実装はかなりテクニカル。 https://theasc.com/article/ad-astra/
Nope / ノープ 夜の広大な風景を“照明で照らす”のではなく、撮影方式そのものを発明して解決する。 通常の夜間照明では広大な牧場が嘘っぽくなるため、昼に赤外線カメラ+65mmフィルムを同期させる独自のday-for-night方式を開発。夜景は「暗いが眼が慣れると見える」状態を狙う。DMXネットワークで遠距離の灯体やスカイダンサーも制御。照明物量より、カメラ/ポスト込みの巨大技術設計。 https://www.cinematography.world/not-of-planet-earth-hoyte-van-hoytema-nsc-fsf-asc-nope/ https://www.motionpictures.org/2022/07/nope-cinematographer-hoyte-van-hoytema-on-capturing-the-epic-scope-of-jordan-peeles-latest/
Oppenheimer / オッペンハイマー 大判フォーマットでは「照らしすぎない」ことを重視。良い場所・自然光・シンプルな配置で成立させる。 自然光ベースの場面が多い一方、ホワイトハウスのセットでは“外の世界の光の泡”を作るために大量の電力を使い、極端に柔らかくして室内には最小限の光だけを届かせた。トリニティ実験周辺では約3平方マイルの範囲を長距離ワイヤレスDMXで制御。画面は簡素、裏側のインフラは巨大。 https://britishcinematographer.co.uk/hoyte-van-hoytema-asc-nsc-fsf-oppenheimer/ https://theasc.com/article/long-range-lighting-for-oppenheimer/

ホイテマの照明は、単純な「自然光派」ではないのです。

Herでは本当に小さく、都市光だけで撮るようなミニマル運用。
Dunkirkでは大作なのに照明はかなり抑制的。
Spectreでは伝統的な意味で超大規模照明。
Nopeでは照明物量ではなく、赤外線+65mmの撮影システムで夜を作る。
Oppenheimerでは画面上は自然光的だが、必要な場所では巨大なソフト光インフラを組む。

一貫しているのは、**キーライトを美しく当てるというより、「その空間に存在するはずの光を、最大限自然に、時には巨大な仕組みで再現する」という考え方です。

精緻でテクニカルな照明力で知られるDPが多い中、ホイテマのイメージは「IMAXを担ぐ人」という感じですが、このIMAXフィルムを活かすためにも/また圧倒的なダイナミックレンジを活用して、照明は比較的シンプルにしてる印象です。その"シンプルさ"がとても巧みだなと思います。

Roger Deakins——光と構図の純粋な職人

ディーキンスはワンカット撮影の達人、という切り口で語られることが多いが、自分が彼から学んでいるのは「使い込まれた照明・構図」という質感だ。

『1917』のワンカット撮影は効果的で、没入感が「自分で試したくなる」衝動を生む。バードマンがギミック感を残したのとは違い、戦場という舞台と継続する時間という感覚が完全に一致していた。

『プリズナーズ』と『ゾディアック』のような作品での光の使い方——特に「光が落ちていく」映像——は、自分が手持ち・ドキュメンタリースタイルで撮る時に参照したいと思っている。

以下はChatGPTによる各作品の照明哲学まとめ↓

Roger Deakins は「自然光派」というより、motivated lighting / source lighting を徹底する人です。
小品では家庭用電球・実用灯・ディマーで済ませる一方、必要なら『Blade Runner 2049』『1917』『Skyfall』級の巨大リグも組む。ただし巨大化しても、発想は常に「その空間に存在するはずの光」から外れません。

  1. Fargo / ファーゴ

照明の哲学
「すごい撮影」に見せず、白い雪・曇天・寒色の現実感で、犯罪劇を乾いた日常として見せる。Deakins自身も、Fargoでは「リアルで生々しい」見た目を狙い、撮影が自己主張しすぎないことを重視している。 

実際の照明
ロケ中心。自然光・既存の実用灯を活かし、高ワットの家庭用電球やディマーで実用灯を増強。夜の車シーンは「月明かり」ではなく、車のヘッドライト由来に見える12Vリグをバンパーに仕込む。駐車場の金受け渡しでは、ナトリウム灯風の実用灯をFay bulbなどで強化。 

規模感
作品規模に対してかなりシンプル。小クルー寄り。ただし事前の図面化・プリリグは精密。

出典URL: https://theasc.com/article/fargo-cold-blooded-scheming/

  1. Prisoners / プリズナーズ

照明の哲学
サスペンスを照明で煽らない。Deakinsは「カメラや照明がサスペンスを句読点のように強調する必要はない」という方向で、抑制された現実感を選んでいる。照明はロケーションとブロッキングから有機的に決める、という考え方。 

実際の照明
ガソリンスタンド、RVのヘッドライト、警察の懐中電灯、レストランのChina ball、家庭用電球、ろうそく、地面に隠した小型ガグなどを多用。レストランは19インチのChina ballに100W家庭用電球、キャンドル・ビジルは二芯キャンドルやダミー電気キャンドル、ソケット列などで作っている。 

規模感
ハリウッドスリラーとしてはかなり低テック。『Skyfall』より難しかったとDeakinsが言っているのは、逆に「道具と準備時間の贅沢が少ない」から。

出典URL: https://theasc.com/article/beyond-the-law-prisoners/

  1. Sicario / ボーダーライン

照明の哲学
緊張感をカメラや照明で過剰に煽らず、観察する。Deakinsは単一カメラ運用を好み、カバレッジを大量に撮るより、決めたショットの持続時間と構図で緊張を作っている。 

実際の照明
メキシコの家では窓をあえて飛ばし、暑さ・外光の強さを優先。トンネル突入前のシルエットは、何週間も前からトラッキングショットを決め、日没直前の光を待って撮影。ラストのキッチンはセット内の蛍光灯+少量のオフカメラ光+壁バウンスで、Benicio Del Toroの目にわずかなキャッチを入れている。 

規模感
アクション映画の規模に対して、照明は非常にミニマル。大きく照らすより、時間帯・既存光・シルエットの設計で成立させている。

出典URL: https://filmmakermagazine.com/96008-so-much-of-what-you-do-is-intuitive-roger-deakins-on-sicario/

  1. Skyfall / 007 スカイフォール

照明の哲学
Bond映画の大規模感はありつつ、照明の根拠は「画面内・空間内の光源」に置く。LED広告、ランタン、キャンドル、火災など、見えている光のロジックから画を作る。

実際の照明
上海の高層ビル戦は、外のLEDビルボードをほぼ主光源として使い、セット全体をLEDスクリーンで照らしている。マカオのカジノは約260個の実用灯、約100本の二芯キャンドル、ランタン、隠し2K Blondes、200灯以上の300W Fresnelなど。Skyfall邸の炎上シーンでは、CTOを入れた32台のDinoをプログラムして炎の揺らぎを作っている。 

規模感
かなり巨大。Bond規模としても大規模だが、単に「全面に大光量」ではなく、LED・実用灯・火の方向性に従わせている。

出典URL: https://theasc.com/article/skyfall-mi6-under-siege/

  1. Blade Runner 2049 / ブレードランナー 2049

照明の哲学
SFの作り物感を、ポスト処理ではなく現場のインタラクティブな光で成立させる。巨大な光源を使っても、キャラクターの顔・空気・霧に実際に光が当たっていることを重視している。

実際の照明
巨大Joi広告の場面では、40×30フィートのLEDスクリーンを実寸で置き、その光で霧とRyan Goslingを実際に照らしている。ラスベガスのショー場面はコンサート照明会社が入り、照明パターンをマッピングして一週間リグ、一部は数日プログラム。Wallaceの部屋では、ARRI 300W Fresnel 256灯を二重円に組んだリング状リグで、太陽が回り込むような光を作っている。海上クラッシュでは、全体を照らさず、スピナー内蔵LEDやヘッドライト/テールライトを主に使う。 

規模感
非常に巨大かつテクニカル。ただし「SFだから全部を均一に照らす」のではなく、LED広告、室内装置、乗り物のライトなど、光源の理由付けは徹底している。

出典URL: https://theasc.com/article/uncanny-valley-blade-runner-2049/
出典URL: https://www.arri.com/news-en/lighting-blade-runner-2049-

  1. 1917 / 1917 命をかけた伝令

照明の哲学
ワンショット風の没入感を壊さないため、カメラが360度動けることを最優先。昼外では照明を置くより、曇天を待つ。夜や室内では、画面内の炎・ランプ・フレア・懐中電灯を基準に設計する。 

実際の照明
昼の塹壕・屋外は、雲が出るまで待って撮影。直射日光が出るとコンティニュイティが崩れるため、晴れている間はリハーサルに回す。地下壕では時代物のランプに500W FEP球を入れ、23%程度まで落として炎のようにパルス。俳優の懐中電灯も小型LEDをカスタム化。燃える教会の夜景は、50フィート級の6段リグにMaxi-Brute、12-light、9-light、6-lightなどを組み、全てディマーとプログラムで炎に同期させている。 

規模感
昼外は極端にシンプル。夜の街・炎上シーンは巨大。作品全体としては、照明よりもカメラ移動・天候待ち・リグ・段取りの規模が非常に大きい。

出典URL: https://theasc.com/article/lives-under-siege-the-goldfinch-and-1917/
出典URL: https://britishcinematographer.co.uk/exclusive-interview-roger-deakins-cbe-bsc-asc-on-1917-bc97/

  1. Empire of Light / エンパイア・オブ・ライト

照明の哲学
映画館内部は暖色で包み、海辺の町は寒くくすんだトーン。感情の温度差を、色温度・実用灯・建築内照明で作る。Mendesとの会話も、技術論より「暖かい/冷たい」「招き入れる/拒絶する」感覚で進む。 

実際の照明
映画館内は実用灯とLEDが大きく担う。LED ribbon、Astera tube、Litepanels GeminiをLight Grid越しに入れたスカイライト、Fiilex P3 Color LED+ソフトボックスなど。プレミアの場面では12フィートと8フィートのAsteraリングライトをモーター付きホイストで上下させ、低い暖色のグローを作っている。 

規模感
中規模。大作的な物量ではなく、建築・実用灯・LED制御を組み込むタイプ。低予算ではないが、『Blade Runner 2049』や『Skyfall』のような巨大照明ではない。

出典URL: https://theasc.com/article/empire-of-light-deakins/

  1. The Goldfinch / ゴールドフィンチ

照明の哲学
自然光に見える光を、撮影スケジュール上の安定性のために人工的に再構成する。記憶・喪失・室内の孤独感を、柔らかい窓光や実用灯で作る。

実際の照明
ニューヨークのタウンハウスでは、短く不安定な冬の自然光を排除し、20×20フィートのUltrabounceをクレーンで吊って自然光を切り、ARRI M90をバウンスして窓光を再現。別の12×12 UltrabounceとHMI、硬い太陽光キュー用のM90も使う。大人になった主人公のレストラン場面はほぼキャンドルのみ。美術館爆発後の場面では、天井リグに50〜60台のARRI SkyPanelを入れて、煙と埃の中の逆光シルエットを作っている。 

規模感
場面によって振れ幅が大きい。レストランは超ミニマル、美術館や人工窓光はかなりテクニカル。

出典URL: https://theasc.com/article/lives-under-siege-the-goldfinch-and-1917/

全体像

Deakinsの実運用は、作品規模ごとにこう分かれます。

タイプ 作品例 実態
低テック・実用灯中心 Fargo / Prisoners / Sicario 家庭用電球、China ball、キャンドル、懐中電灯、車ライト、ディマー。かなり現場運用的。
自然条件を待つタイプ Fargo / 1917 / Sicario 雪、曇天、日没直前などを待つ。照明で再現するより、条件を選ぶ。
巨大だがmotivated Skyfall / Blade Runner 2049 / 1917夜景 LEDスクリーン、炎、実用灯、車両ライト、巨大リングリグなど。物量は大きいが、光源の理屈は明確。
建築・セット組み込み型 Empire of Light / The Goldfinch LED、Astera、SkyPanel、実用灯を美術と一体化。表から照らすより、空間そのものを光らせる。

要するにDeakinsは、「きれいなキーライトを足すDP」ではなく、“その場所で実際に起きていそうな光”を、最小構成または巨大インフラで成立させるDPです。
低予算的な方法も大作的な方法も使うが、判断基準は一貫していて、光の出どころ・人物の見え方・画のリアリティが優先されています。


3人とも「誰の仕事か分かる」DP だ。スタイルを持ち、かつ作品に奉仕している。自分が将来そういう仕事をできるかどうかはまだ分からないが、何を目指すかは、誰を見るかで決まると思っている。

Curated by Ryo

島田のコメント

ホイテマ、ディーキンスの各映画の技法については調べて加筆しました。「どんなスタイルのDPを真似したいか」を考えるためにもこういう情報は大事ですね。 全くスタイルの異なるローレンス・シャーについてもまた調べてインプットしたいところ。